本の紹介 投資信託の不都合な真実(2022.08.22)

投資信託の不都合な真実  ビジネス社 鈴木雅光

著者は、「金融ジャーナリスト」と肩書が書かれています。私もそれなりにいろいろな本を読んできましたので、これを見たときに、「ああ、理論や技術ではなく、実情を暴くといった類の内容か」と想像しましたが、まさにそのとおりでした。まえがきのところに「・・・投資信託で資産を増やすために必要な内容は一切盛り込んでいません。むしろネガティブな事実を伝えることに主眼を置きました。」と著者自らが書かれているので、なんらおかしなことではありません。ただ、まったくこのまえがきどおり、選ぶポイントのようなことは一切書かれていないので、投資初心者がいきなり読むような本ではないと思います。

おそらく著者がおっしゃりたいことは、一番最後のページに集約されているように感じました。「自分で考えられない人は投資信託を買うな。しっかり勉強しなさい。」ということだと思います。それ以外の部分は、まあ想像通りというか、まえがき通りというか、裏の実情を紹介するといった感じの内容で、ある程度経験のある人にとっては「まあそんなもんだろうね」といったものがほとんどだったり、「投資信託の購入手数料は廃止するべきだ」とか言われても「それをここで主張されてもね」といった感じで、サブタイトルにある「地獄に堕ちないための13章」や、帯にある「悪夢の全13章」といった表現はかなり誇張されていると思いました。そこまで”ヤバい”内容ではありません。

私的に心に残った内容としては、「投資信託は6000本あるが半分程度しか投資する価値はない」(第1章)と、「少額投資で資産形成はできない」(第5章)という見解でした。前者は、私的には半分どころか10~20本程度しかないんじゃないかと思いますが、確かに意味のないファンドが多い理由を投資信託の回転売買を根拠に説明されています。後者は、最近流行り?の、「100円から投資できます」といった商品に対する批判ですが、これもおっしゃるとおり。そんなものでは複利の意味もなく、「ひとえに風の前の塵に同じ」です。また別のところで、「ノムラ日本株戦略ファンド」がまだあることに驚きましたが、その信託報酬が生む利益のことを聞くとなるほどと思いました。

はじめに書きましたとおり、投資信託を選ぶポイントのような内容は何一つ書かれていませんが、それはまえがきにある作者の意図通りの内容なので何も間違っていません。そして書かれている内容は嘘ではないと思いますが、思った通りジャーナリスト的な内容の本です。ある程度経験のある人が、興味というか知識として読む分にはいいかも知れませんが、私的には自分の知識の再確認といった感じでしたので、もう一度読み返すことはないと思います。

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